帝国データバンクは2025年3月4日、2024年度における美容室の倒産状況について調査・分析した結果を発表した。集計期間は2000年4月から2025年2月末までとなっている。
同調査によると、2024年度の美容室倒産件数は2月末時点で197件に達し、前年同期の156件を大幅に上回るペースで増加している。この時点で既に前年度の累計倒産件数(182件)を超え、過去最多を更新する見込みとなった。また、東京商工リサーチの発表でも2024年の年間倒産件数が過去最多を記録したことが報告されている。なお、これらの倒産はいずれも負債額1,000万円以上の事例である。
美容室経営を圧迫する「三重苦」
帝国データバンクの分析によると、美容室業界は現在、以下の三重苦に直面している。
- 人手不足
- スタイリストの不足が深刻化し、熟練した技術者の確保が困難に。
- 優秀な人材の引き留めのために給与水準が上昇し、人件費の負担が増大。
- コスト高騰
- シャンプーや美容資材の値上げが進行。特に円安の影響で輸入品の価格が上昇。
- 水道光熱費やテナント賃料の高騰が、経営を圧迫。
- 市販品ベースのヘアケア用品価格は、過去5年間で約14~16%上昇。
- 競争激化
- 新規開業が相次ぎ、美容室同士の競争が激化。
- フリーランス美容師の増加により、従来のサロン経営モデルが揺らぐ。
- 消費者の節約志向の高まりで、高単価メニュー(パーマ、カラーなど)の需要が減少。
価格競争と利益圧迫
このような状況の中、都市部では顧客獲得のための割引クーポン発行など、実質的な値下げ競争が発生している。2024年度の全国平均カット料金(12月時点)は約3,700円で、過去5年間でわずか4%の上昇にとどまった。一方で、原材料費や人件費の上昇が続いており、サービス料金の引き上げが難航している。
業績悪化と倒産リスクの高まり
こうした厳しい経営環境を背景に、2024年度の美容室の業績(2月までの判明分)は約3割が赤字経営に陥った。さらに、「減益」を含めた業績悪化の割合は全体の6割に達し、コロナ禍で経営状況が急激に悪化した2020年度(73.5%)に次ぐ高水準を記録した。
このように、美容室業界は今後も倒産リスクが高まる可能性があり、経営の見直しや差別化戦略が求められる状況が続いている。