宿泊業界から理美容業界へ広がる「ダイナミックプライシング」の波
近年、宿泊業界をはじめとしたサービス業界で「ダイナミックプライシング制度」の導入が進んでいる。これは、閑散期と繁忙期の需要に応じて価格を柔軟に変動させる仕組みで、航空券やホテルの料金設定などでおなじみだ。しかし、曜日によって利用者数に大きな差が生まれる理美容業界でも、この制度を取り入れるサロンが増えてきている。特に、土日祝日に予約が集中し、平日の稼働率が伸び悩むという課題を抱えるサロンにとって、ダイナミックプライシングは新たな経営戦略として注目されている。
こうした中、メンズ専門美容サロン「GOALD」を運営する株式会社GOALDは、2025年8月1日より全7店舗においてダイナミックプライシング制度を導入すると発表した。GOALDは「すべての男性が自己実現できる社会の実現」を掲げ、時代の変化と顧客ニーズに合わせた柔軟なサービス提供を目指している。今回の制度導入は、平日は従来通りの価格、土日祝日は全メニューで1,000円(税込)を加算するというシンプルかつ分かりやすい料金体系を採用している。
価格改定の背景と狙い――平日の利用促進とサービス品質維持
GOALDがダイナミックプライシングを導入する背景には、土日祝日に予約が集中しやすい一方で、平日の稼働率が課題となっていた現状がある。特に都市部のサロンでは、週末に予約が取りづらくなる一方、平日はスタッフや設備に余裕が生まれてしまうという「曜日による需要の偏り」が顕著だった。こうした状況を打破するため、GOALDは土日祝の料金を一律1,000円上乗せすることで、平日の利用を促進し、全体の稼働率を高める狙いだ。
具体的には、渋谷本店の場合、スタイリストカットの料金は平日5,500円、土日祝は6,500円となる。すべてのメニューで同様に土日祝は1,000円高く設定され、全国7店舗で統一した料金体系が採用される。これにより、平日の利用者には従来通りの価格メリットが生まれ、土日祝の利用者には「より高いサービス品質」や「予約枠の拡大」などの付加価値を提供できるという。
ダイナミックプライシングがもたらす今後の展望
GOALDが導入するダイナミックプライシング制度は、単なる価格改定にとどまらず、今後の経営戦略にも大きな影響を与えると考えられる。平日の利用促進によるコストの最適化や、土日祝の予約枠の拡大、さらにはサービス品質の維持・向上といった効果が期待されている。また、実際に運用する中で得られる顧客動向や予約データを活用し、今後の新店舗出店やサービス内容の改善にも役立てる方針だ。
理美容業界では、従来の固定価格制から需要に応じた柔軟な料金設定へとシフトする動きが今後さらに拡大する可能性がある。GOALDのような先進的な取り組みは、業界全体のサービス向上や顧客満足度の向上にもつながるだろう。顧客が自身のニーズやライフスタイルに合わせて最適なタイミングでサービスを利用できる環境づくりが、今後の理美容業界の発展に向けた重要なカギとなりそうだ。