経済産業省が2025年12月15日に公表した最新の「第三次産業活動指数(2025年10月分)」により、理美容業界の最新の景況感が浮き彫りとなりました。今回のデータでは、美容業と理容業の間で明暗が分かれる結果となっており、特に美容業における長期的な低迷傾向が顕著になっています。

美容業の現状:5カ月連続の「100割れ」と拭えない停滞感

今回の発表で最も注目すべき点は、美容業の指数が96.4にとどまり、5カ月連続で基準値(2020年=100)を下回ったことです。

第三次産業活動指数は、サービス業を中心とした経済活動の動向を把握するための重要な指標です。基準となる2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により活動が制限されていた時期ですが、その水準を5カ月連続で下回っているということは、美容業界がコロナ禍以前の活気を取り戻せていないどころか、厳しい低成長・停滞期に入っていることを示唆しています。

前月比ではプラス3.4ポイントと上昇に転じており、月単位での「持ち直し」は見られたものの、指数水準そのものが低い(100に届かない)状況に変わりはありません。この数値は、客数の減少や来店サイクルの長期化、あるいは消費者の節約志向といった構造的な課題が依然として影を落としていることを物語っています。

理容業の現状:回復基調と「100」超えの維持

一方で、理容業の指数は103.8を記録しました。美容業とは対照的に、基準値である100を上回る水準を維持しています。

前月比でもプラス3.3ポイントと、第三次産業全体の総合指数(プラス0.9ポイント)を大きく上回る伸びを見せました。理容業は、総合指数の動きに追随する形で堅調な回復基調にあります。美容業に比べて流行の変化や低価格帯競争の影響を受けにくい特性があることや、身だしなみに対する根強い需要、さらにはメンズ美容市場の拡大といった要因が、指数の下支えになっていると考えられます。

理美容業界全体と日本経済の動向

第三次産業の総合指数は前月比プラス0.9ポイントと微増しており、日本経済全体としては緩やかな回復局面にあると言えます。しかし、理美容業界を個別に見ていくと、理容業は全体に歩調を合わせているのに対し、美容業は指数の絶対値が低いまま取り残されているという歪な構造が浮かび上がります。

美容業界では、ここ数年、光熱費や資材費の高騰によるコスト負担増が続いています。多くのサロンが価格改定(値上げ)を行っていますが、それが客数減少や、来店頻度を1カ月半から2カ月へと延ばすといった消費行動の変化を招き、指数の停滞につながっている可能性があります。

今後の見通し:統計の修正と市場の再評価

今回の公表では、過去のデータに遡及修正(過去に発表された数値を最新の情報を基に書き換えること)が行われています。第三次産業活動指数は速報性が高い反面、後から修正が入ることも多いため、今回の「前月比プラス」という回復の兆しが本物かどうかは、今後の推移を慎重に見極める必要があります。

特に美容業においては、年末から年始にかけての繁忙期に向けてどこまで指数を押し上げ、100の大台に乗せることができるかが焦点となります。

結論

2025年10月のデータは、理美容業界が依然として不安定な状況にあることを示しました。

  • 理容業:回復傾向が明確で、経済全体と同調した動きを見せている。
  • 美容業:前月比では持ち直したものの、5カ月連続の100割れという、長期的かつ深刻な停滞期にある。

今後の美容室経営においては、単なる客数確保だけでなく、1人あたりの単価向上や高付加価値サービスの提供、さらにはリピート率を高めるための顧客エンゲージメントの強化など、指数の停滞を打破するための抜本的な戦略が求められる局面に来ていると言えるでしょう。